ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

「God's Child」

4月9日お昼の時間に、MTVで「ニルヴァーナのアンプラグド」が
放送された。
全く知らずに偶然テレビをつけたものだから、画面一杯にあのカート・コバーン
映っているのを見て息が止まりそうになった。
アコースティックギターを抱えて椅子に腰掛けて歌っている。
エレキギターの歪んだ爆音を掻き鳴らすのではなく
静かに穏やかに語りかけるような歌声が何て胸にしみるのだろう。
感情を込めて切々と歌い上げ、上手く出ない声を振り絞るように
シャウトするその姿に涙を抑えきれない。
ゲストを迎えてカヴァー曲を演奏した。
カートの笑顔のなんと無邪気で可愛い事か。
何故なんだろう。何故こんなにも音楽を演る為に生まれてきたような人が
自らの命を絶ってしまったのだろう。
3月末に出版された分厚い「Heavier Than Heaven」本を読んでも
私には判らない。
本にはこのアンプラグドに出演した時の状況にも触れられていた。
カートは極度の緊張と薬の禁断症状に苦しんでいたらしい。
≪アコースティック・ライヴをする事に怯え、恐怖に慄いていた≫のだと。
でも彼はあの素晴らしいライヴをやり遂げたのだ。
彼にしか、ニルヴァーナにしか、あのライヴは為せなかったというのに...。

私は、最近吉井和哉が見に行ったというロジャー・ウォーターズ繋がりで
ピンクフロイドの創生期の中心メンバー【シド・バレット】に惹かれている。
シドのソロアルバムを聴かせて貰ったのだが、曲調は全く違うのに
その歌声にカートと同じ匂いを嗅いでしまった。
シドは余りに鋭敏過ぎる感性が災いして精神に病んでしまった
≪狂ったダイヤモンド≫と称された人物、未だ生き続けているらしいが
既に遠い世界へ旅立ってしまった人だ。
片や愛する妻も子も、そして音楽さえ捨てて自分の頭を銃で打ち抜いた人。
天才と呼ぶに相応しい、言うならば「神の子」の彼らが何故?と思ってしまう。

音楽シーンにカノ人達が居ない事が淋しくて、つい不平不満を感じてしまっていた
けれどゴメンなさい。やっぱり贅沢は言いません。生きていてくれるだけで、
また4人に会えるという希望が持てるだけで幸せだ。
シドの歌声を聴いていて、しみじみそう思う。