ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

希望の歌を

レッド・ツェッペリンの、というよりは、全ロック曲の名作中の名作とも
いうべき「天国への階段」は 、映画「狂熱のライブ」(サントラ『永遠の詩』)中、
プラントの"This is a song of hope.(希望の歌を)"という呟きで始まる。
優美で繊細なギターの調べに華麗なオルガン、プラントの祈りにも似た声が鳴り始め、
そこにベースとドラムも加わり、次第に力が生み出されて行く。
幻想的な異次元の世界へ引き摺り込まれるような圧倒的なパワーを感じる。
全ての苦しみから解き放たれる圧倒的な光の世界、精神の解放された世界への
焦がれるような憧れと願いが、繰り返される美しいリフによって増幅されて行く。
静から動の鮮やかな展開、ストイックでありながら官能の陶酔さえ滲ませて、
生と死を連想させるドラマチックな大曲だ。

この「天国への階段」は、71年3月のライブでの初演の後、80年のバンド解散まで
常にライブの中心的楽曲で演奏し続けられた曲であるという。
4人のライブは一番初めのニュー・ヤードバーズとしての分も合わせると
68年から80年までの間に約700回にまで及んだという。
驚異的な数字である。2時間はいうに及ばず3時間とも言われる長時間のライブ、
過酷なワールドライブツアーがプラントの声質に傷を負わせ
(私自身は超ハイトーンヴォイスよりも中期以後の歌い方が好きだけれども)、
ライブの後のテンションと疲労を紛らわせる為の深酒がバンド全体を磨耗させ
バンドの寿命を縮めて仕舞ったのかと思うと苦しくなる。
けれど、DVD、ライブCDなど現在入手出来るこの「天国への階段」の音源を
聴くと、それぞれの会場のこの曲を形作るエネルギーの何と強大な事だろう。
イントロが流れ始めて巻き起こる観客の歓声のもの凄さ。
大観衆を呑み込んで一つの大きな磁場が作られて行く様子が
この音だけで想像出来るようだ。

「希望の歌を」
いつかのライブで吉井和哉も、こう言って歌い出した事があった。
あの時演奏されたのは「JAM」だったろうか。
「JAM」は私にとっては、社会的な歌ではなく極めて内面的な「愛の歌」だと思うので
イエローモンキーの「希望の歌」は「球根」だと思う。
生と性への衝動、深い絶望の果てにゆっくりとしたたかに光に導かれ
芽吹く希望という存在。
“希望の歌を”そう呟く吉井和哉の曲紹介でイエローモンキーのライブを体験したい。
既に2年半にも為ろうとする休止期間だけれど、きっとメンバー4人にとって
密度の濃い時間になっている事を願う。