ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

映画「ロックスター」

人気ヘヴィメタバンド Steel Dragon の熱狂的ファンで、ヴォーカルを完全コピー
出来るクリスが突然脱退したそのヴォーカルの後釜に迎えられ、
一躍スターの座に着くというシンデレラストーリーである。
ステージでは大観衆の熱狂の声援に包まれ、夜は華やかな女達に囲まれ
酒を浴び、いつしか恋人とも心がすれ違うようになり、
暫くして再会した時には、ドラッグに溺れ自分のいる場所がどこかも
判らなくなっていた。
冒頭でのキラキラと輝くように幸せそうに歌っていた彼が、曲作りには
参加させて貰えず、ただ衣装を着て歌うだけの存在である事が必要なのだと
悟った時の哀しみが切なかった。
透析を受けつつツアーを廻るバンドメンバーから
『お前の役目は、ファンの夢を生きる事。突っ走れ。夢はデカク。
ロックに生きろ。』と声を掛けられる場面が印象的だった。
そして、クリスが作って来た曲を聴こうともしなかったメンバーが
『ファンが求めているのは、Steel Dragon の曲だ。ファンが求めるのと違う曲を
演ればファンは離れる。
期待通りの曲を演ればファンは歓ぶ。』と言い放つ場面では、
そうして結局バンドは飽きられ、廃れて行ったのだろう、
とやるせない気分になった。
結局、クリスはステージ上からかつての自分自身のようなヴォーカルの素材を見つけ、
手を取ってステージに挙げ歌わせ、そっと舞台を去って行く。
『小便に行って来る』と言って出て行く彼をそっと抱き締め『元気でな。』と
送り出したマネージャーが本当に良い味を出していた。
髪を切り質素な服装で昔の仲間とオリジナルの曲で手作りのステージで
歌うクリスの歌はとても味わい深いと思った。
『自分の曲を自分の歌で』歌う事がどんなに大きな事か、改めて感じられた気がする。
Steel Dragon のメンバーが凄いと思っていたら、ドラムがあのLED ZEPPELIN
ドラマー、故ジョン・ボーナムの息子のジェイソン・ボーナムなのだそうだ。
「狂熱のライブ」の中でドラム練習してた可愛い子がこんなに立派なドラマーに
為っていたんだね。

“ロック・スターになれば羽根が生えてきて
 ロック・スターになればたまに夜はスウィート”と吉井和哉は歌ったけれど
2年半の間、ロック・スターから離れ、今またその場所へ戻ろうとする今の気持ちは
如何ですか?
また過酷な戦場へ還って来るのですね。翼は充分に力を蓄えていますか?
どうぞ雄々しく存分に翼を拡げて、ロックミュージックの世界に旋風を
巻き起こして下さい。
楽しみにしています。