ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

不意の涙

7月10日に出た『エアロスミス・ファイル』を読み始めている。
デビューから31年、現在日本ツアーを敢行中のモンスターバンドの
バンド・ヒストリー、ディスコグラフィ、過去このバンドに関わった人達の証言、
作家佐藤正午さんの特別寄稿、そしてロック・ジェット誌でお馴染みの面々による
レヴューが256頁という膨大な紙面に納められている。
THE YELLOW MONKEYのギタリスト菊地英昭氏のインタヴューが載るという事で、
随分前から楽しみにしていた。
菊地英昭=エマさんのインタヴューは思っていた以上に多く収録されている。
まず、エアロスミスの『メイキング・オブ・パンプ』という
アルバム《パンプ》のレコーディング風景を映像化したものについて語っている
のだけれど、このエアロスミスのレコーディングやアルバム作りの印象を
述べる際に、THE YELLOW MONKEYを『自分たち』と表現した事に、
思わず涙が溢れて仕舞った。長く引用する事を許して欲しいのだが
『ザ・イエロー・モンキーだったら、吉井和哉という奴がいる。で、彼の
頭の中にある音の形を具体的に作り上げていこうとする。これは、エアロスミス
でいうと、スティーヴンの頭の中にあるロックをバンドが作り上げていこうとする
ところと、全く同じなんだよね。』
バンド休止から3年半、それでもエマさんがTHE YELLOW MONKEYを
『僕ら』と言い、エアロスミスのレコーディング風景を
『自分たちとダブった。』と表現してくれた事に胸が一杯になった。
後半、『ジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォードの挑戦』でも、
エアロスミスのレコーディングにおいて、スティーヴン・タイラー
大きな力を発揮しているという事に関連して、『吉井もそういうタイプ』と
言い切っている。
サウンドもメンバーをも外枠から客観的に観る事が出来る中心があって、
信頼し合え、より一つの固まり感が出る・・・そしてその中心スティーヴンも
あの5人以外のところでは、その才能を充分に発揮出来ない。
ティーヴンの神懸かったかのような存在感はあの5人でしか光らせられない
・・・あのバンド形態が理想だ。』と。
エアロスミスの話をしていらっしゃるのに、THE YELLOW MONKEYのことばかり
思って仕舞って申し訳ないけれど、この『5人でしか光らせられない』の部分から
先日の「bridge」での渋谷陽一氏『4分の1でしかない』発言が重なった。
吉井和哉は、今YOSHII LOVINSONとしてソロとして新しい可能性を模索している。
彼の紡ぐ詞、彼の作り出す曲は魅力的だ。
けれど彼の頭の中に鳴る音を彼は、あのTHE YELLOW MONKEYのメンバー以外で
上手く作り出せているのだろうか?
本当に余計な事を言っているのだろうと思う。
ソロで頑張っている人に鞭打つ酷い言い方だろう。
現在レコーディング中だと伝えられるセカンドアルバムが完成したら、
次は来年早々ライブの予定だというけれど、
ステージ真ん中に立つ吉井の傍らにエマさんではない誰か別のギタリスト、
ヒーセではないベース、アニーではないドラマーの姿があるかと思うと、
どうしても何か落ち着かない、やるせない気分になってくる。
本の中でライブ・ブートレッグ解説に『ライヴ盤においてさえも、エアロスミス
ライヴ・バンドなのだ。』という記述がある。
THE YELLOW MONKEYも日本最強ライヴ・バンドだ。
THE YELLOW MONKEYのLIVEが恋しい。

ジョー・ペリー脱退時の後任ギタリスト、ジミー・クレスポと、
ジョー・ペリー・プロジェクトのヴォーカリスト
(チャーリー・ファーレン、カウボーイ・マック・ベル)への
インタビューは、実に興味深かった。
ジミー・クレスポが語る『スティーヴンはジョー・ペリーを望んでいた。
・・・彼らを(音楽の面だけでなく)精神的に生き延びさせた。』という言葉は
重い。ジョー・ペリー・プロジェクトに参加したヴォーカリスト達の証言も、
生々しい。チャーリー・ファーレンは、ジョーにとってエアロスミスが一番であって、
そこに戻りたがっていると感じバンドを去ったと言うし、第三期ヴォーカリスト
=カウボーイ・マック・ベルも『いつだってジョーの横に立つのは、
スティーヴン・タイラーだと思っていた。』と語る。
5年近くに及ぶジョー・ペリー・プロジェクトは、ドラッグまみれの暗闇を抜け、
彼の作曲、パフォーマンス、彼自身がクリアに力強く鍛えられて行った事で、
エアロスミスに戻って行けたその過程に必要不可欠な道であったのだろう。
ジミー・クレスポもチャーリー・ファーレンもカウボーイ・マック・ベルも、
エアロスミスというバンドがバラバラだった時代、それぞれのメンバーを支え、
現在の揺ぎ無いモンスターバンドへと押し上げた多大な功労者なのだね。
この人達のインタヴューを目にする事が出来て、とても嬉しく思う。