BS放送「歌伝説ちあきなおみの世界」を見た。
1時間半という時間が本当にあっという間に思える程、
密度の濃い時間だった。
私は、ちあきなおみが歌っている映像よりも
コミカルなあのCMや愛嬌のある女優としての演技の方が
映像としては良く覚えている気がする。
だからデビュー曲「雨に濡れた慕情」を歌う姿に驚いた。
髪をなびかせ自転車で走り、公園の遊具で遊ぶデビュー当時の映像が
新鮮だ。この番組は、「歌手ちあきなおみ」の誕生から、
時を経てそれぞれ代表的な曲の映像を散りばめ、何人かの方々が
コメントを出していらっしゃるのだけれど、船村徹さんの
『(ちあきなおみは)おたまじゃくしの裏側を歌う事が出来る』
との言葉が印象的だった。
単に情感を籠めるとかいう次元じゃない。
「紅とんぼ」そして、
私の大好きなあの「朝日のあたる家(朝日楼)」の歌唱を見られて感激した。
紅白で歌ったという「夜へ急ぐ人」の迫力はどうだ!
当時のちあきなおみのインタヴューで、『ステージやLPで
好きな歌を歌う』と語っていたのが心に残った。
『歌いたいという気持が心の中に沸いて来る』だったかな?
ポルトガルのファドという歌を取り上げて歌った「霧笛」。
魂を震わす歌だ。
歌を演じるという次元を超えて、観る者聴く者をちあきなおみという
一人の輝きに呑み込んで仕舞うような「ねえ、あんた」。
圧倒された。
これだけの歌い手が突然表舞台から去って仕舞うなんて
本当に残念だ。
CM曲で流れる「黄昏のビギン」が甘く切なく胸に沁みる。
歌手ちあきなおみとしてはもう私達に歌を届けてくれる事はないのかも
しれないけれど、本名に戻った一個人としての彼女は今も、
自分自身、そして亡くなった愛する人の為に歌を歌っていて下さると
良いのにと思う。