ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

この美しいものを 守りたいだけ

「別冊カドカワスガシカオ特集号の「Born in’66」コーナーで
スガさんと同じ1966年生まれの吉井和哉が自らの音楽ルーツを
語っている。
『レトロなにおいの」する新しいものが好き』という言葉に
凄く共感した。
興味深かったのが最近また「デビルマン」を読んだという箇所だ。
『最後までくると怖い怖いって思いながらキターッって、
快感みたいになってました』
私も久し振りに読み返してみた。
初めてこのデビルマンという漫画に出会ったのは随分前の事だけれど、
未だにあの鮮烈な感動が色褪せないというのは、本当に素晴らしいと思う。
特に文庫版第5巻の、飛鳥了が己の正体に気付いてからの怒涛の展開が凄い。
美樹が暴徒に襲われる場面、串刺しにされた美樹の頭部、
不動明の怒りと絶望の爆発。そして最終戦争。
すべてが終わって波打ち際で静かに語りあう了と明。
「ゴゴゴゴゴ・・・」と轟音を轟かせて浮かび上がる曼荼羅のような光。
最高に美しいラストシーンだ。
吉井は、今読んでみて色々なテーマが隠れていた事に気付いたと語っている。
『同性愛、宗教、輪廻・・・』
テレビアニメ「デビルマン」のエンディングテーマ曲
「今日もどこかでデビルマン」の中に
“人の世に愛がある 人の世に夢がある
             この美しいものを 守りたいだけ”というフレーズがある。

吉井和哉の歌に密接に繋がっていると感じた。
吉井は、本当にこの「デビルマン」に強烈な思い入れがあるのだろうなあ。
ミック・ロンソンの「Sloughter on 10th Avenue」ライナーノーツに寄せた
1984年僕は、まるで不動明デビルマン
なる為に、飛鳥了の家の、地獄の扉を開けるかのごとく、
一生を変えられてしまう体験をすることになる。』と形容して
ボウイとロンソンの『Life On Mars』を初めて聴いた日の衝撃を記している事でも
判るけれど。
デビルマン」は、吉井にとって『悪魔の力身につけた正義のヒーロー』として
とても大きな存在なのだろう。
でもね、私は、吉井和哉不動明デビルマンだけでなく、
吉井和哉飛鳥了=堕天使ルシファー=サタンでもあると思っている。
吉井という人間は、人の痛みも苦しみも怒りも喜びも、
弱さも強さも、聖も邪も全て呑み込んで
そして歌にして吐き出せる人だと思っている。
奇麗事だけじゃなくていい。
これからも吉井和哉には、生と性と死の深淵を
聴く者にするっと覗き込ませてしまうような歌を歌って行って欲しい。