ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

トム・ダウド「いとしのレイラをミックスした男」

トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男 [DVD]

トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男 [DVD]

先日吉井和哉が紹介してくれていたDVDを観た。
『超有名な音楽プロデューサー』だそうだが、
今まで全く知らなかった。
けれどこの方は、レコードエンジニアの先駆者といっていい
多大な功績を挙げて来られた方だった。
ジョン・コルトレーンレイ・チャールズ
ジョン・レスポールアレサ・フランクリン
オーティス・レディング、、、超一流のアーティスト達が
トム・ダウドに出逢い、信頼を寄せ、数多くのレコードを
世に送り出して行く。
「8トラック」「多重録音」を真っ先に取り入れたのが
このトム・ダウドだったのだという。
10代で音楽エンジニアの道に足を踏み入れたのだというが、
彼には意外な経歴があった。
『音楽以外の話では今の時代に無視できない
重要な問題が横たわっています』と吉井和哉が語っていたけれど、
それは、1942年〜1946年コロンビア大学在学中に軍に招聘され
マンハッタン計画」に関わっていたという事だ。
ビキニ環礁での核実験では現地で観測も行っていたのだそうだ。
当時のあの映像は、ちょうど今の日本の状況を思うと、
非常に怖ろしいものだった。
トム・ダウドがコロンビア大学に復学してそのまま
原子物理学の道に進んでいたらば、レーナード・スキナ―ドも
オールマン・ブラザーズバンドもそしてあの「レイラ」も
世に出ていなかったのだろう。
ギターの神様のようなエリック・クラプトン
トム・ダウドを父親のような存在だと話す。
終盤の「いとしのレイラ」誕生のいきさつが
やはり非常に興味深かった。
デュアン・オールマンエリック・クラプトン
二人の才能あるギタリスト同志が言葉でなく音で、
理解し合い惹かれあい、そして新しい大きな力が
生まれて歴史に残る曲が刻まれた。
30年振りだと言いながらトム・ダウドがミキサーを操って、
『これがデュアンのパート』『そしてこれが重なって・・・』
『初めてミキシングする気分だ』と
少年のような笑みを浮かべるシーンで、思わず涙してしまった。
最後に『ピアノが好き。誰かが弾くピアノの音が好き』という
ピアノ曲を弾いた彼がとても愛おしく思えた。
最後に浮かびあがって来た文字は、
『大事なのは心の中のメロディーを
人に伝えることなのだ』だった。

いとしのレイラ(デラックス・エディション)

いとしのレイラ(デラックス・エディション)