ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

彼の女たち

『忘れたくても忘れられない18年前のあの夏。女たちは、
パンクバンド「ガーゼ・スキン・ノイローゼ」のボーカリスト
Jに出会い、人生が変わった。』
『女たちが夢中になったのは、一発屋ロッカー・J』
『私たちは、確実に生きてきた』

その見出しに惹かれて読んだ。
ひときわ強く心に残ったのは、角田光代「楽園」だ。
「最下層」の高校生活のある日、女子高生ノンコは、Jに出会い、運命を感じる。
懸命に痩せ、仲間とファンクラブを作り、必死でJと繋がろうとする。
頼み込んで頼み込んで処女を捧げる。いじらしい。
その後も周りの女の子たちを蹴落とし、
最終的に妻の座を手に入れるのだけれど、
陽のあたる場所に立つことはない。
落ちぶれたJを支え、「復活」ライブの為に奔走する。
愛されているんだかいないんだか、ちっとも報われてはいないように、
見えるけれど、こんなに一途に愛する対象に出逢えたノンコを、
「楽園」を信じ続けようとする、その強さを持つノンコを、
羨ましいと思った。
それにしても、嶽本野ばら唯野未歩子井上荒野江國香織が描く女たちも、
それぞれ個性的で生き生きと息づいているのに、
彼女たちの人生を歪めちゃったJ本人ってのが、
私には、あまり魅力的に感じられなかった。
女にだらしなく優柔不断で生活力の欠如したダメ男。
母性本能くすぐるタイプなのだろうか。
多分ステージに立つと一変するのだろうねえ♪
嶽本野ばらの「プリンセスプリンセス」の中に
ある女の子がJのどこが好きかを『私は彼の生き様です』と
宣言する場面が出て来る。
「彼の生き様が好き」ってさあ、私も十数年前に
おんなじ事を当時あったロキノンのBBSに書いた事があったわよ。
超恥ずかしい。
吉井和哉の生み出した作品を聴いて、LIVEパフォーマンスを観て、
雑誌や映像を目にして、その人の生き様までをも感じられると、
本気で思っていたなんて、思い上がりも良いところだ。
吉井和哉」は幻のひと・・・
そう捉えているくらいがちょうど良い。



巻末の作家5人による制作秘話座談会で、
角田光代さんが落ちぶれる前のJは絶対的に
イエモン吉井和哉だったって仰っていたのがツボでした♪




Jが落ちぶれたのは、女関係に躓いたからでも
運が無かったからでもないのだわね。
ただ才能が足りなかっただけ。きっとただそれだけ。