ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

Sweet Candy Rain

ラジオ局へリクエストし続けた甲斐があった。
田舎のラジオ局へは、サンプルが送られて来ないんじゃないかと
諦め掛けていたところだった。
WHAT's INの歌詞を先に見て仕舞って、
あまりに私小説風の歌詞に、こんなところまで歌ってしまうのか、と
吉井和哉自身の内面を深く掘り下げ過ぎているんじゃないだろうかとか、
ほんの少し気掛かりだったのだ。
WHAT's INに載っていたレヴューに「絶望」「決別」「悲痛な叫び」という言葉が
あったけれど、初めてYOSHII LOVINSONの歌う
『Sweet Candy Rain』を聴いて私が感じたのは、淡い虹だ。
仄暗く垂れ込めた雲の隙間から差し込んでくる光を感じた。
ノスタルジックな曲調に柔らかく艶を帯びたファルセットを多用した
歌声は、私自身の心の奥に仕舞った柔らかい所を直撃して来る。
幼い日の思い出や愛し愛されてきた人達、亡き父の事・・・
どれも大切で尊くて、今の私を形作ってくれたという事を。

「Sweet Candy Rain」というタイトルから、メロウなラヴソングだと
思っていたけれど、こういう形で来るとは、
そして、これをアルバム『At The Black Hole』の先行シングルに
持って来るとは、流石YOSHII LOVINSONだと思う。
頼もしいね。悲嘆や苦悩を噛み締めて静かに自分の立ち位置を
認識して、そしてそれから・・・という覚悟を感じるのだ。
THE YELLOW MONKEYというもの凄く大きな拠り所を離れて、
一人のミュージシャンとして起つ時、その風圧は如何ばかりかと
思うけれど、「TALI」「スティルアライヴ」そして
この「Sweet Candy Rain」を聴く限り、YOSHII LOVINSONの世界は、
着実にしっかりと構築されているようだ。
繊細で儚そうに見えて本当は凄く強い人だなあ。
シングル曲としては、哀愁を帯び過ぎで売れ線ではないのかも
しれないけれど、この曲は好き者にはマタタビの如き曲だと思う。
C/W曲の「SPIRIT'S COMING(GET OUT I LOVE ROLLING STONES)」
「70 GO」も期待が募る。PVは、本人出演だと良いんだけどねえ。