ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

高く遠い夢

高く遠く、永遠にたどり着けないような高い山
あきらめなければ 登りつづけられる
一歩づつ いつか夢の頂上へ
そう思うも 現実ははるかに厳しい
死力を尽くして 不撓不屈
根性 情熱を燃やして
限界を超えて 登りつづける

三浦雄一郎 5月23日 下山中、サウスコルにて

日曜の午後、TVで「三浦雄一郎 70歳のエベレスト登山」
という番組が放送されていた。
2003年5月に70歳という年齢でエベレスト登頂に成功した
三浦雄一郎さんのドキュメント映像だった。
YOSHII LOVINSONの頃にコラムで、吉井が飛行機の中で読んだ
この三浦さんのインタヴューの話を取り上げていたのを思い出し、
興味深く観ていた。
エベレスト登頂に向けての厳しいトレーニングの日々の様子が
描かれていた。「何故、そこまで遣らねばならないのか。」と
傍目には思えて仕舞う程の過酷なトレーニングを、
三浦さんは、飄々とこなして行く。
やがて現地へ到着し、徐々に身体を慣らし、いよいよ明日から
エベレスト挑戦が始まるという前夜、日本で待つ娘さんと奥様に
電話で話した折、「無理をしないで。」と呼び掛ける奥様に
三浦さんが『いくところまで行けば、その先は、宇宙しかないから。』と
答えておられた場面がとても印象深かった。
C2(6450m)地点、テントの周りには、ヒマラヤスズメやカラス達が
集っている光景に驚く。
けれどその先には、青光りする氷の壁が立ちはだかっている。
酸素の助けを借りてようやくC4サウスコル(7984m)に辿り着いた時、
三浦さんは、剥製のように固く凍りついた鷲の亡骸に遭遇する。
大きな岩の上に石を積んでお墓を作り、
手を合わせ弔ってあげる三浦親子の様子に
命というものの厳しさ、尊さというものを知る人の温もり、
極限に挑む人の清らかさを感じた。
TVのナレーションは、このC4サウスコルが
『世界で最も高い峠』なのだと告げていた。
「人が登ろうとするからこそ、峠が生まれる」
以前この日記にも書いたことがある。
THE YELLOW MONKEYの曲で私が最も愛するのは、「峠」だ。
どんなに強い風が吹こうと視界が悪かろうと
きっとその先には、「虹」がある。

三浦さんと二男の豪太さん、カメラマン村口さんの三人は、
狭い岩の間にテントを張ったC5(8400m)という場所で
登頂アタックの機を狙う。限界ギリギリの状況で
まさに死と隣り合わせの場面で、最善の判断を下す。
あの精神力の強靭さは、脅威だ。
ベースキャンプからつぶさに詳しく情報を送る
長男雄大さんの力も大きい。
ついに70歳と7ヶ月で三浦雄一郎がエベレストの頂に立つ日がやって来た。
1970年三浦さんがエベレスト滑降を成功させた時にも撮影したという
カメラマンが超望遠レンズで捉えた映像が物凄く美しかった。

今日、三浦雄一郎さんが書かれた70歳エベレスト登頂記「高く遠い夢」を
読んで、改めて思った。
吉井和哉菊地英昭も広瀬洋一も菊地英二
やっぱり「峠」の戦士だ。
今は、きっとそれぞれの「峠」に挑んでいるのだろう。
けれど、戦士達が目指す空の彼方にはきっと同じ「虹」が出ているのだと思う。