「失われた愛を求めて」と「バッカ」
そもそも「失われた愛を」求めようとしても無理だろう。
失われて仕舞っているのだから。
失くした「愛」をどこか他所で見つけようとしても、
それは、自分が真に欲しかった「愛」ではない。
何故なら、自分は、あの時あの状況で、「愛」に
満たされたかったのだから。
まして、誰かを犠牲にして手に入れる「愛」なんて
紛いものでしかない。
見つかるはずのない「愛」を求めて、
「愛」の飢餓状態にもがき苦しみ、安らぎを渇望し、
「失われた愛を求めて」生きる吉井和哉は、
永遠の旅人なのだろう。
「どこまででも行けるという特別な切符」を手渡され、
「あらゆるひとのいちばんの幸福」を求めなくては
いけないという果てしない旅を運命づけられているのだと思う。
「自伝」と「バッカ」PVで浮かび上がる吉井和哉の
イメージは、「孤独な旅人」だけれど、
ただ孤独を悲しんでいるのではないと感じた。
“音楽を軸に回るオレのLIFE
この星の思い出を歌に
・・・・・・
絶え間なく続いて行くドラマ
ただ君と一緒にいたかった
独り言言うよ
メリークリスマス”
本当に大切なものは何かを見つけた男の静けさ、
それでも旅を続けて行かなくてはいけない男の厳しさ、
この「バッカ」は、
人間吉井和哉の「儚く切なく美しい」愛の歌だ。