ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

[吉井和哉]スノードーム


スノードーム

スノードーム

吉井武道館で初めて「SNOW」を聴いて、特に
“ヒラヒラ ハラハラ 雪みたいだな
 君との願いが積もるようだな
 銀色に輝いて 音もなく降り続いて”
の部分から、
スノードームの中でゆっくり降り積もる雪のようだなと
思っていた。
スノードームの題材はは、有名な観光地やキャラクターや動物が
多いけれど、この「赤富士と東京タワー」が
あまりにも「VOLT」にぴったりなのに笑って仕舞った。
私が購入出来たのは、普通の緑色した富士山の方だけれども。
「スノードーム」というタイトルに惹かれて
アレックス シアラー著「スノードーム」という小説に出逢った。
この原題を『The Speed of the Dark』(闇の速度)という作品は、
とても不思議な本だ。
そこには、「光の減速器」の研究に没頭する青年科学者
クリストファーがある日突然失踪して仕舞う。
残されたのは、同僚チャーリーに宛てられたある奇妙な原稿だった。
そこに綴られていたのは、彼の父親とその若い恋人と
彼らが不意に行方不明になった後にまだ幼かったクリストファーを
引き取って育てたエックマンという人物が描かれている。
本当に切ない話で、私は特に、この異形の科学者にして芸術家の
エルンスト・エックマンの「闇」に注目した。
「愛」の物語なのだろうけれど、私は、「喪失」ということを
より強く感じた。
愛する者を喪って人は、どうその事を受け入れていくのか、
どう「自分が自分である為に」どう生きていかねば為らないのかを
考えさせてくれる物語だと思った。
エックマンは、恐ろしい間違いを犯したけれど、
クリストファーを育てる過程で、自分を必要とする存在を
守り尽くす事で「愛という光」を求めようとする。
自分の命に限りがある事を悟ってクリストファーへ真実を明かす
遺言を残そうとするエックマンの姿、そして驚愕の真実に
向き合ったクリストファーが最後に下した決断の重さに
胸を撃たれた。

吉井和哉が描いた「SNOW」とどこか通じていると思った。
スノードームに降り積もる雪は、人々の愛の記憶かもしれない。
忘れられない想いが消えずに降り積もって、
でも決して滅びた訳じゃない。
いつかまた新しい「愛」が生まれ煌めく時が来る。

『われわれは光に向かって、旅をしている。』