ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

吉井和哉ファンが読む「共喰い」

共喰い

共喰い

吉井和哉が「カズブンコ」?でお薦めしてくれている
「共喰い」を読んだ。
万人の方におすすめというわけにはいきませんが、
昔の僕のように自分の血に疑問を持っている方には
ものすごくお薦めします
もちろん、やみくもにグロくもエロくもありません
おこがましいですが、僕がたまに歌にする「昭和の夏」の
セクシャリティがふんだんに盛り込まれているところも
個人的に嬉しかったです[ヘンタイ]
後半ちょっとSF的に感じた父と母の決着のシーンも[トランスフォーマー]
舞台が昭和最後の年というのも切ないです
当然
いすゞ
★★★★★


昭和最後の夏の「川辺」の
家庭排水や汚水が流れ込むヘドロと魚のはらわたの
生臭さ、そして人が流す血までもが
匂って来そうな心地がした。
17歳になったばかりの主人公遠馬。
暴力的なSEXの性癖を持つ父親円、遠馬が生まれて一年で
子を残して円の元を去った母親仁子。
この円より一回りも年上で、右手を空襲で失い、
義手をつけて魚屋を営んでいる仁子というのが、
肝っ玉が座っている、正に母「いすず」のような女性だ。
現在遠馬と父親と一緒に暮らしているのは、
飲み屋で働く琴子。
円に殴られて時折、頬や目の周りに痣が出来ても
「何故別れないか」と聞かれて、
「体がすごいええて」、「殴ったらもっとようなるんて」と
答える女性だ。
少し頭が足りないんではないかと思うような、
柔らかな巨乳というイメージだ。
この人にも私は、「いすず」の面影を感じる。
遠馬が千種と川についてやり取りする場面が
印象的だ。
父親が「川は女の割れ目」だと評したことを、
千種が『うまいこと言うやん』
遠馬は『どんだけ頑張って生きとっても、
最終的にはなんもかんも川に吸い取られる気ィする』と。
遠馬は、初めて父親の好物の鰻を釣り、
『裂けて、半ば崩れた鰻の頭を目にして』
性的興奮を覚えて戸惑いを覚える。
女を殴ってSEXする、そうしないと興奮しない、
そういう父の血が自分に流れている・・・
恐れていた筈なのに、千種の首を絞めてしまう。
父が通う女のひとりに、
アパートの角に座り込む女もいる。
千種に拒絶された遠馬がこの女のところへ行き、
頬を打ち髪を掴んで犯す。
『自分自身は、一番新しい父だと感じた』
その感覚は、どれほどゾッとするものだったろう。
子供を宿した琴子は、この家を去る決意を固め、
ついに決行する。
この後、吉井和哉
『ちょっとSF的に感じた父と母の決着のシーンも
[トランスフォーマー]』へ繋がって行くのだけれど、
「SF」&[トランスフォーマー]と表現する吉井和哉は、
流石、一種独特だと思った。
息子の父親殺しを阻むため、己の義手で突き殺す、
母の一途さ・強さが凄まじい。
おそらく、人を殺めた血の穢れから鳥居をくぐらなかった事を、
一度止まったもの(生理)がまた復活したから「すごい女」だと
皆に噂されて、遠馬が笑い泣きそうになるところが、
なんとも言えずせつないおかしみを感じた。
仰る通り
いすゞ
★★★★★ でした。