ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

太陽と月とひまわり

メカラウロコ20は、貴重映像のオンパレードだったけれども、
その中でも私が最も心奪われたのは、「EXPERIENCE MOVIE」から
jaguar ard pain」にかけての楽曲たちだ。
「シルクスカーフに帽子のマダム」の主人公マリーさん。
そして「jaguar ard pain」のジャガー、この二人を巡る物語とは、
一体何だったのだろう。
アルバム「jaguar ard pain」ジャケットには、こう記されている。

ジャガーとは1944年、異国の戦地にて戦死した若者の名前です。
彼はとても野性的な瞳をしていて、性格も狂暴で女にだらしが無く、
わがままでナルシストで楽天家で、
それでいて泣き虫でおセンチで少しだけ純粋で・・・
と、正に僕たちの考える”人間の本来の姿”の象徴でもあるのです。
 
そしてこのジャガーとは、あなたのまわりに確実に存在する
”肉体は死んでも魂だけは永遠に生きている”
人達の象徴でもあるのです。
 
このお話はジャガーが死ぬ瞬間に祖国に残してきた、
恋人”マリー”の魂を見てしまったために
肉体が滅んだことにも気づかず、魂だけが時を越え
50年後の現在へタイムスリップしてしまい、
時代のズレを感じながら恋人マリーを捜すというストーリーで、
永遠に死なない人間の魂がテーマです。

そして「Jaguar hard pain final tour 94」のパンフレットには、


悲しい映画を見ても何とも思わない

奇麗な景色を見ても何も感じない

それは俺がただ恋をしてたから

マリー俺の顔に化粧をしてくれないか

君にこの素顔を見られたくないんだ

お願いだこの顔に化粧をしてくれないか

何度も体中に稲妻が走った

何度も胸に石がつまった

結局俺は何も愛せなかった

マリー俺の顔に化粧をしてくれないか

汚れたこの素顔を見られたくないんだ

お願いだからこの顔に化粧をしてくれないか

そしたら俺は君だけに

愛を与えられそうな気がするから

October 12.1994 JAGUAR
と、書かれている。
jaguar ard pain」ラスト曲「MERRY X'MAS」では、
“部屋の真ん中に鏡を置いて君と二人で紅をひくのさ
 最後の夜に最高の夜にこの世に背を向けよう”と
歌われている。
ツアー最終日、吉井和哉は、
『僕は女装をするのが好きでした。』と告げたそうだ。
ジャガーとマリーは、実は、同一人物だと告白したのだという。
美輪明宏さんとの雑誌対談でも吉井和哉は、
『そのひょっとしたら自分のおばぁちゃんじゃないかと思った女性に、
僕はマリーっていう名前をつけて、
一つの物語を作ったんですよ。戦時中に何かの理由で引き離されてしまった、
ジャガーという兵士と、マリーさんのラヴ・ロマンス。
太平洋戦争で戦死したジャガーの魂が現代にタイムスリップして、
彼は音楽をやってる。で、結末としては、ジャガーとマリーは
1994年のクリスマスに出会って、また二人であの世に行くんだけど。
実は、二人は同一人物だったという・・・。そんなストーリーのアルバムを作って、
ライヴをやったりとかしてたんです。』
と語っている。
「シルクスカーフに帽子のマダム」のマリーさんは、現実に太平洋戦争時代を
生きたお祖母ちゃまをイメージしたのかもしれないけれど、
愛する夫が26歳の若さで突然命を喪って後に残された若妻・吉井和哉自身の
母親の姿が大きく映し出されているのだろう。
そしてジャガーは、《野性的な瞳をしていて、性格も(狂暴で?)
女にだらしが無く、わがままでナルシストで楽天家で、
それでいて泣き虫でおセンチで少しだけ純粋で》
これは、吉井和哉自身だろう。
かつてFCのHPで『基本的に可愛がってほしい。本当は可愛がってほしい。
ってか、もっと可愛がれ!!』と言い放った男だ。
そして、若くして愛する人と引き離されて仕舞った
吉井和哉の父親の姿をも投影しているのだろうと思う。
ジャガーは、“暁に果てるまで!悲しき!ASIAN! BOY!”のシャウトが
鮮明に浮かぶように、「太陽」に守護された存在だ。
そしてマリーは、太陽に照らされて浮かび上がる優しく豊かな「月」の化身
のように私には、思える。
先週「黄金の都シカン展」に行って来たのだけれど、
シカンでは、太陽と月、昼と夜、善と悪、陽と陰、金と銀という
相対する対極のモチーフを、人間のバランスを取るものとして
重要視したそうだ。
ジャガーのモチーフが沢山展示されていて、
展示品の冠から「DUST AND DUST」の偽ジャガーアイマスクを
連想しちゃったりもした。
そういえば、パンチドランカーツアー時にも、赤と黒
太極のシンボルが使われていたね。
更にいえば、「BUNCHD BIRTH」の両性具有のジャケットも。
全ては、ずっと繋がっていたんだね。
父親が亡くなった26歳の夏に怯えていた吉井和哉は、
女装をすることで、“26歳で死ぬ”っていう厄から逃れられた。
美輪さんが仰るように、前世での「フランスの娼婦のマリー」の物語を
知らない間に描いていたのかもしれない。
何も不思議なことじゃないのかもしれない。

ジャガーとマリーが魂の片割れ同志なら、
ジョアンナ「最後のワンピース」は、何だったのだろう。
今ふっと浮かんだのは、
太陽や月に恋焦がれるだけの、ただ風に揺れるひまわり。
LONELY(笑)



またまた蛇足ですが、そもそもジャガーとマリーは、同一人物、
つまり両性具有(私は、常々吉井和哉は、魂の両性具有だと思ってる)なので、
女装をして“26歳の厄”から逃れせしめたのは、
ひょっとしたら、お父様晃さんの命日8月19日の前々日17日に
姿を現したジョアンナの功もあるんじゃないかな、と勝手に思ってます。
♪良いじゃないの 幸せならば♪