ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

ありがとう絆と先々の長い願い

今この文章に出逢えた事は、必然であったのだと思う。

捨てることは、抱え込むことより更に大きな力を必要とする。
だからこそ、その場にとどまるのではなく未明のかなたに
自分を投げつける第一歩となり得るのだ。
そして、表現者にとってまず捨てなければならないものは、
自分の血であり肉である、故郷なのかもしれない。……
12世紀のドイツの哲学者、聖ビクトル・フーゴーの言葉に
このようなものがある。

「故郷を甘美に思うものは、まだくちばしの黄色い未熟者である。
あらゆる場所を故郷と感じられるものは、すでにかなりの力を蓄えたものである。
全世界を異郷と思うものこそ、完璧な人間である。」

故郷を甘美に思うものは、一度故郷を捨てたつもりになってもどこかに
「思い出」として抱え続ける。いつも自分の帰る場所を確保することで、
停滞してしまっている人のことだ。
あらゆる場所を故郷と感じられるものは、自分のよって立つ場所を
どこにも求めず、一度すべてを捨て切ることを
知っているもののことだ。
そして、全世界を異郷と思うものは、
本当の意味で他者とであったことのある人間である。
自分で自分を限定することなく新たなる世界へ、
自分を投げ出すことのできる勇気をもったもののことだと思う。
   「友川かずき/Live-MANDA-RA Special」   ライナーノーツ大関直樹



2001年1月THE YELLOW MONKEY最後のシングル「プライマル。」が出た時、
“VERY GOODだいぶイケそうだ
 旅立ったら消せそうじゃん
 今度は何を歌おうか?
 卒業おめでとう ブラブラブラブラ”

あっけらかんと“振りきったら飛べそうじゃん”と歌われて、
何だか肩すかしを喰らったような、
そんな割り切れない気持ちをずっと抱いたままだった。
けれど、このライナーノーツの文章に出会って、
そして「プライマル。」を思い浮かべて
聴いていたら、わだかまりがストンと落ちた気がした。
吉井和哉は、もう本当に『全世界を異郷と思うもの』に
為っているのだろうねえ。
「全世界を異郷」といっても、変に片意地を張るのではなく、
物事を新鮮に、柔軟に受け止めて、
おおらかに凛々しく歩き出す姿が目に浮かぶ。
「プライマル。」を本当に理解するのに8年も掛っちゃったわ。
時間かかり過ぎ!(笑)