ROMANTIST TASTE

この羽よりも軽いもの?

HEART BREAK

悪人

悪人

世の中、吉井和哉ZEPP東京2日目で盛り上がっているだろうに、
私は、吹き付ける風の強さにガタガタ音を立てるこの部屋で
吉田修一の「悪人」を読んだ。(感想は、覚え書きに載せた。)
最終頁に『でも、あんな逃げ回っとるだけの毎日が……、
あんな灯台の小屋で怯えとるだけの毎日が……、
雪が降って二人で凍えとっただけの毎日が、
未だに懐かしかとですよ。ほんと馬鹿みたいに、
未だに思い出すだけで苦しかとですよ。』
という文章がある。
この場面で、THE YELLOW MONKEY最後のアルバム「8」の
HEART BREAKを思い浮かべた。
“僕らに行くあてはないけど
 いつまでもここにはいれない
 白い雪をかきわけながらどこへ行こうか”

この曲が発表された時、「雪の逃避行」「山小屋」という
シチュエーションに妖しく艶めかしい閉塞感を感じた。
この男女は、犯罪者か不倫かとにかく追われる身の上なのだろうと
そう思っていた。
けれど、冒頭に聴こえる機械音は何だろう?
曲の終りに聴こえるこのノイズは、何だろう?
まるで組織を裏切って逃げ出したアンドロイド達の行末みたいだ。
もしかしたらどちらかが人間なのかもしれない。
ダメージを受けて死にかけて或いは壊れかけた恋人達が
“HEART BREAK同じ痛みを
 HEART BREAKわかりあえたね”

肌を寄せ合っているのかもしれない。
“早くよくなろう”は、
性的な意味に捉えていたけれど、
「心中」「情死」の方が近いのではなかろうか。
首を絞めて殺そうという衝動を覚えるまでの想いの深さと強さ、
そういう「愛」の形もあるのだね。

「HEART BREAK」のこの逃げ場のない男女は、
この曲を作った当時の吉井和哉が抱いていたTHE YELLOW MONKEYの姿を
投影しているのじゃないかと思った。
相撲の「死に体」何故かそんな言葉が浮かんだ。
自ら「死に体」宣告を下した吉井の愛だったのじゃなかろうかと、
そう言う風に感じた。